博士と三好くん。そして僕。

(小説)博士と三好くん。そして僕が織りなす日常。

不死身殺し

渡部はできるだけ目立たない格好で山に入ることにした。 登山者の格好だ。 一人でGPSが指す位置の場所を目指す。 やはり少し緊張する。 山に入る前に、道のような場所は見つけた。砂利道だ。 ここを救急車は登っていった? しかしながら、木の間に「私有地に…

第8話:観察開始

渡部の仕掛けたGPSは、定期的に信号を発信し続けていた。 渡部は自分のPCで確認しながら、それが市街地から離れていくのを見ていた。 病院に運ぶと思っていたが、どうも違うらしい。 山間部に入っていく。 ちょっと予想外の展開になってきた。 GPSからの位置…

第7話:不死身

約束通りの15時30分きっかりに救急車は着いた。 電話番号も上に確認をとって、厚労省の特別のダイヤルだということは分かった。 ”MIYOSHI"が殺人以外で亡くなったということは確定なのだが、厚労省が出て来て、わざわざそれを引き取りたいと言い出した。 別…

第6話:人間社会

「警部。急いできて下さい。」 「電話? いつも俺を呼ぶ時は急いでじゃないか。」 「そ・・・それが、普通じゃないんですよ。」 「なにが?」 「厚労省からの電話です。」 「は?」 「厚労省です!」 「なんで俺に直接。」 「分かりませんよ。警部の名前を直…

第5話:友人

「身元が分からない。”MIYOSHI”だけとはね・・・」 「所持品もなし。行方不明者リストにも載ってない。」 「これはお手上げだ。ご遺体を返してあげたくても、どこにも連絡がつかないよ。」 「殺人の可能性は?」 「どこにも傷やあざがないんだよ。肺に水は入…

第4話:死体

その男は、海に打ち上げられていた。 誰も名前は知らない。 それは真冬で、仮に濡れていなくても浜辺で一晩過ごせば凍え死ぬ。 早朝に小型犬とウォーキングをしていた初老の男性が、見つけたのである。 最初は、小型のイルカか何かかと思ったらしい。 その男…

第3話:亜人

群れという習性を持つのは、知能に比例するだろうか。 単純な群れを形成することは、小魚にもできる。 そう考えると、単純に知能が高い低いによって、群れが形成されるとは考えにくいだろう。 しかし、コミュニティーとして、つまり意思疎通を行う思考が絡ん…

第2話:博士との出会い

ある日、起きた時。 今までの記憶が全てなくなったら、人はどのような行動をとるだろうか。 本当に脳の中の全てのデータが消失したら、人は何を始めようとするのだろう。 過去を思い出そうと努力する? 自分が何者なのか思い出そうとする? それとも、今自分…

第1話:歯車を壊した日

人形が仮に人の言葉を覚えて、自分と会話が成立した場合。 その人形は、「物」なのか、それとも「人」なのか。 感情とは、その人の脳で生成されるとは言うけれど、生成されても黙って立っていたら、それは感情をもった「人」なんだろうか。 何かを表現し、相…

【プロローグ】

「今日も一つも良いことはなかった。多分、明日も変わらない。」 僕は、誰に話したわけでもなく、独り言のようにつぶやいた。 いつもは電車で帰るが、今は誰にも会いたくない気分だった。 会社から歩いて帰っていた。 なぜか涙が止まらない・・・