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博士と三好くん。そして僕。

(小説)博士と三好くん。そして僕が織りなす日常。

第3話:亜人

群れという習性を持つのは、知能に比例するだろうか。

単純な群れを形成することは、小魚にもできる。

そう考えると、単純に知能が高い低いによって、群れが形成されるとは考えにくいだろう。

しかし、コミュニティーとして、つまり意思疎通を行う思考が絡んでくると、それは異なってくる。

同じ知能を持った者同士として、コミュニティーを形成することになる。

先ずは同じ種類の動物としてつながりを持つ。

他の種類の動物は敵とみなすか、または自分の獲物と考えるだろう。

次に、その中に、些細な違いを見つけ出しコミュニティーは細分化を始める。また、何故か優劣を比べ始める。

しかし、同等の知能を持っていながら、どの細分化したコミュニティーにも属せない者はどうなるのか?

味方? 敵? 獲物?

神話の中では、中間に属する者達は多くいた。しかし、彼らは容姿が異なり、同じコミュニティーを形成できなかった。

現実問題それが発生したら、自分一人で生きることを選ぶのか。

それとも、何かしらの融和を求めて、コミュニティーに属することを願い、努力を続けるのだろうか。




三好くんはニコニコして、博士をヘッドロックしながらこちらに向かってくる。

半分、僕の顔は引きつっていた・・・

白い髪の毛と薄くなった頭部が、無残にもこちらを向いて、連行されてくる。

「こら!痛い!止めんかい!!」

「博士が悪いんですよ? ちゃんと起きててって言ったのに。」

「もう起きてるからいいじゃろうに!」

なんと哀れな老人。

「はい!連れてきたよ!自己紹介をどうぞ!」

その老人と私は、人一人分の距離で顔を向け合っている。

なんともシュールな図だ。

「あ・・・あの。三好くんに誘われて参りました。平と申します。」

「君が、三好くんの友達だね。まぁ、そこの椅子にかけなさい。」

「僕はコーヒーを入れてくるよ。楽しくおしゃべりしててね!」

「あの子が、あんなに嬉しそうなのも久しぶりじゃのう・・・」

「あの。何か言いました?」

「いや。こっちの話じゃ。それよりも、君は三好くんを見て、何か思ったことはあるかね?」

僕は自分の名前を言ったのだから、自己紹介ぐらいしてくれてもいいのに。

まぁいいや。博士と呼べばいいのだろう。

「三好くんのことですか? まぁ、少々強引ですが、悪い人ではないと思いましたよ?」

「悪い”人”ねぇ・・・」




「はい。どうぞ。」

いい匂いがする。

三好くんが買ってきてくれたのは、「ダッチマンズブレンド」だったっけ。

「砂糖とミルクはいるかい?」

「僕は、ミルクが欲しいな。胃が弱いんだ。」

「ふむ。それは残念。コーヒーはブラックが一番だ。でも胃が痛くなるなら仕方ないねぇ。ちょっと待ってて!」

そういうと、彼は簡易的なキッチンのようなところに入っていった。

この建物は何でもそろっているのかな?

博士の部屋と書かれているぐらいだ。寝泊まり出来るようになっているのかもしれない。

「ほら。ミルクだよ。」

彼は銀の小さなミルクピッチャーを渡してくれた。本格的だね。

少しミルクを入れて、コーヒーの中でうずを巻いて溶けていくのを眺めていた。

ゆっくりカップを近づけて飲んでみる。

いい香り。そして酸味は強いが、コーヒーの味の深みはあって、僕は好きな味だった。

普段はコーヒーの味なんて気にしない。多分、マクドナルドのコーヒーを並べて出されても、差は分からないだろう。

でも、今日はゆっくり時間をかけて飲むことにした。

この気まずい空間で、何を話したらいいのか分からないから、コーヒーを味わっていることしか出来ないのだ。

ふと、デスクに座っている博士を見ると、博士はプルプル震えている。

「どうかしましたか?博士?」

「三好くん・・・なぜ、わしのカップには、つぶつぶが浮いておるのじゃ?」

「あぁ〜。それはごまですよ?」

「ごま?!なぜ、わしのはごまが入っているのじゃ? しかも香りも全然違うし、どろっとしとるぞ?」

「前回は、ウスターソースを試したので、今回は黄金のタレです。」

「わしは普通のコーヒーが飲みたいといっとるじゃろ?!」

「博士は好き嫌いが多いですね。そんなこと言ってると、身体が弱りますよ?」

「焼き肉のタレを直のみする方が、死ぬじゃろうて!」

「わがままばかりいいますね〜。しかし、日に日にバレる時間が早くなってきていますね。学習成果として記録しないと・・・」

「三好くん。わしで何の実験をしておる?」

「人間の五感における強化学習と、刺激耐性度についてです。」

「そういうのは、事前に説明してから被験者に了解を得るものなのだぞ?」

「ネタバレしたら正しいデータはとれません。」

「もういい。わしが自分で入れてくる。」

「嘘ですよ。ほら。こっちに淹れたてがありますよ。」

「おお〜!さすがじゃ!いや。当たり前だな。頂くとするかね。」

その老人は、口に含んだ後、それを噴出した。

「醤油もなしじゃ!!」

「失礼しました。こちらですよ。(醤油は飲むと・・・カキカキ)」

「これじゃ!これ〜。美味しいのぉ。三好くんの入れるコーヒーは美味しいのぉ。」

もう許したらしい。ころころ喜怒哀楽が変わって、忙しい老人だ。




「そうだ!僕はね、ここの本を毎日のように読み込んでいるんだけど、どうしても分からない部分があるんだよ。君の意見が欲しい。」

「え?僕の?」

「そうだよ?僕は毎日が勉強だ。」

僕はちらりと博士を見る。

博士は、目だけこちらを向け、コーヒーを飲むふりをしてうなずいてみせた。

どうやら、三好くんに協力してくれということらしい。

「まぁ・・・僕で分かることなら。」

「ありがとう!何やら人間には、男と女という分類があり、性器の違いがあるらしいんだ。僕は男と分類されるらしい。女についてを知りたい。」

ゴフッ!

博士が、カップの中にコーヒーを逆噴射させている音が聞こえた。

「おい・・・それ冗談で言ってるんじゃないだろうな?」

「何のことだい?」

「そんな中学生みたいな冗談は好きじゃないよ。」

「うーん。そうなのか。中学生は知っていることなんだね・・・すまない。僕は分からない。だから聞いてる。」

「はぁ?いや・・・だから何を・・・」

「待ってて!図解されていたから、その本を取ってくるよ。結構分厚い本で、確か段の上にあったはず・・・」

彼は駆け出していってしまった。

遠くから声がする。

「あった!これだよこれ!」

仕方ないので、僕は声のする方に歩いて行った。

自分の背丈の倍ぐらいの本棚。

はしごを使わなければ、上段部にある本は取り出せない。

しかも、その本は棚の一番上にあった。

僕が別の本棚を曲がって、彼を見た時、彼はその本をはしごに乗りながらぶんぶん振り回していた。

こっちにおいでと合図しているらしい。

と思った瞬間。




ガッ




三好くんは、はしごから足を踏み外した。

彼はかなりの高さから落ちた。しかも、運が悪いことに、本を持っていたために受け身がとれなかった。

頭から落ちたのだ。

ドズン・・・

鈍い音がするのと同時に、彼が顔から地面に落ちていくのを目の前で見てしまった。

そして、顔は地面にぶつかり、そのエネルギーは顔を伝わって首に伝搬していった。

首の骨はそのエネルギーを受け止められなかった。

その形を崩すことによって、エネルギーを吸収することにしたのである。




彼は何事もなかったかのように立ち上がった・・・

「この本なんだけど・・・あれ?逆さまに見えるなぁ。」

僕は固まって動けなかった。

人は理解が出来ないことに遭遇すると、声も出ないらしい。

そこには、首がねじれ、顔がぐるりと上下逆さまになって立っている、三好くんがいたのだから。




キャラ原案:taguchizu(id:taguchizu)
ストーリー:Milk (id:maxminkun)