博士と三好くん。そして僕。

(小説)博士と三好くん。そして僕が織りなす日常。

第5話:友人

「身元が分からない。”MIYOSHI”だけとはね・・・」

「所持品もなし。行方不明者リストにも載ってない。」

「これはお手上げだ。ご遺体を返してあげたくても、どこにも連絡がつかないよ。」

「殺人の可能性は?」

「どこにも傷やあざがないんだよ。肺に水は入っているが、溺れた時に気管に入ってしまったものらしい。」

「死亡推定時刻は?」

「今から2〜3日前。もっと細かいのは解剖のやつらに聞いてくれ。」

「潮の流れからして、どこから流れ着いたとかは推測出来ないものかね?」

「それももうしました。それに、恐らくは入水したであろうと思われる場所で聞き込みもしましたよ。でも、誰もこの人物を見てない。」

「スーツで水泳ね。この時期はお勧めじゃないな。仕事が嫌になったのかね?」

「私に聞かれても・・・そんなの分かるわけないでしょ。生きてれば何かあるかもしれないのに。」

「生きてるうちに彼に言ってやればよかったものを。」

「彼だけじゃないでしょ。日本全国の人に電波で脳みそにまで伝達してあげないと。この建物から出ただけで、死んだ魚の目をした人間はうようよいる。」

「そういう言い方は不謹慎だぞ。まるで予備軍みたいな言い方じゃないか。」

「違うんですか? 今回はたまたま連絡先が見つからないけど、いつもこんなことばかりでしょう? ご遺体の遺留品から家族に連絡して、引き取ってもらう。もう嫌になっちゃいますよ。」

「しかし、どうしようかね。 もう捜査は打ち切りにするか。事件性はないんだったら調べてもしょうがない。身寄りもないって話なら、こちらで供養をするしかないかねぇ。」

「警部。お電話です。緊急の要件だそうです。」




「み・・・三好くん?」

彼の部屋にゆっくり入っていった。

先程まで青白かった顔は、血がちゃんと通っていて、普通に見える。

「わしの言ったことを信じてもらえるかね?」

博士が突然に背後から現れた。あまりにショックすぎて、僕は周りの様子が見えていなかった。

ただ単に寝ているだけのように見えたので、もう少し近寄って彼の隣に立ってみた。

枕元に立つ。なんちゃって。

カッっと目を開く三好くん。

余計なことをするんじゃなかった。心臓が止まるかと思った。

「あ・・・あれ? 文字が反対に・・・」

「見えるわけないじゃろう。」

「博士・・・もう少し遊んでもいいじゃないですか。」

「彼はわしを殴る勢いだったのじゃぞ? 遊びは終わりじゃ。」

「と言うわけだよ。」

「そんなので分かるか!」

と・・・とにかくだ。彼はゾンビであると認めないといけない。

いや・・・待てよ。全部含めてドッキリなのかも。マジックだよ。きっと。

「マジックじゃないよ?」

「ゾンビは人の頭が読めるのか?!」

「君の思考が単純すぎるんだよ。後は、だいたい人の反応は2パターンに分かれる。マジックか何かだと頑なに信じないパターンか、自分が妄想の状態に陥っていると言うパターンだ。」

「怪奇現象が好きな人たちは?」

「彼らも実物を見たら信じられないんだよ。自分の脳で処理できない物事は、何かしら自分の中で理解できるものに変換しようとする。例えば、神様という概念も人は理解できずに、絵画や彫刻に変換するね。そこに何かが宿ると考えるんだよ。」

「男と女の区別がつかない割には、宗教や哲学には詳しいんだな。」

「区別はつくさー。男と女の違いも分かる。分からないのは実際に実物を見たことがないってことだけ。」

「絶対に、女性に会わせない。動画でも検索しろ。」

「あはは〜! その手があったか! 君は妙なところで頭がいい。本当は実物で観察したいけど、妥協することにしよう。」

「うるさい。妥協とかいうな。変態野郎」

「こっちは頭が一度回転してるんだ。これ以上、悲しみで頭が揺れそうな言葉を投げかけないでくれよ。」

「知るか!何回でも蘇るくせに。」

「何を怒っているんだい? 君に何か不利益でもあったのかい?」

そうだな・・・どうして僕は怒っているんだろう。

目の前のことが信じられないからか。それとも、彼を心配していて裏切られたからか。

後者は悔しい。悔しいから却下する。

さて、大概の人間は2パターンの反応を示すというが、僕はどうしようか。

やっぱり妄想だったと考えて忘れてしまおうか。もう、関わらなかったことにしよう。

ゾンビがいようがいまいが、人を襲う感じも無いし、僕には関係ない。

「友達みたいな会話だなぁ。 そう思いませんか?博士。」

「まぁ、そうじゃな。しかし、ゾンビなのがバレた時点で、もう友達ごっこは終了じゃな。」

「そっかぁ・・・次はもっと上手くやる。ヘマしない。せっかく友達になれそうだったのになぁ。」

彼は窓の外を見ていた。哀しそう・・・

いや。撤回。いつも通り、へらへらしている。

でも、何となく頬を水がつたっているようにも見えた。

「さぁ。じゃあ、お別れかな。君も僕と過ごした時間を、妄想の幻影の時間としたいのでしょう? このラボの敷地の外までは案内しよう。」

「いや、最後まで見届ける。三好くんは危なっかしい。そして、本当にゾンビなのかも怪しい。だから最後まで見届けてやる。」

自分でも何を言っているか分からなかった。

「あはは〜。僕を観察するのかい? 観察日記を付けるのかな? ゾンビの観察日記かぁ。あまり売れないと思うよ?」

「うるせえ!」

「くくく・・・好きにするといいさー。先ずは、お友達より手前の、”ゾンビ観察”から始めるんだね? 良い感じだ。」

「良かったのう。因みにその観察日記は、わしにもコピーをくれ。三好くんはわしでも謎がおおいのじゃ。外で遊んでくるのはいいんじゃが、何をしているのかさっぱりわからん。」

「えええ?! こんな人? ゾンビ? を野放しにしてるんですか?」

「野放しと言っても・・・監禁しようとしても、わしが逆に監禁されるわい。」

「まぁ、そういうことだね。」

「そういうことだね、じゃない!本当に、何も常識を知らないんだな。」

「だって。ゾンビだもの。知らないものだらけさ。そして、この世界は不思議なもので溢れている。全部を知るまで死ねないよ!!」

彼は、ゾンビになったことに対して悲観的ではなさそうだ。まぁ、ゾンビってのが本当ならばね。

「三好くん。もう少しだけ寝ていなさい。ちょっとだけまだ顔が歪んでおるぞ?」

「そうです? おかしいなぁ。鏡では普通に映ってるけど・・・じゃぁもう少し寝てますよ。」

この博士。さらっと酷いことを言う。これ以上、治らないだろ。

「少しだけ話がある。こっちへ来なさい。」

博士は小声で僕にそう言って、部屋の外へ促した。




キャラ原案:taguchizu(id:taguchizu)
ストーリー:Milk (id:maxminkun)