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博士と三好くん。そして僕。

(小説)博士と三好くん。そして僕が織りなす日常。

第7話:不死身

約束通りの15時30分きっかりに救急車は着いた。

電話番号も上に確認をとって、厚労省の特別のダイヤルだということは分かった。

”MIYOSHI"が殺人以外で亡くなったということは確定なのだが、厚労省が出て来て、わざわざそれを引き取りたいと言い出した。

別に問題ないが、根回しが早すぎるし、情報がどうしてそこまで伝達されたのか謎だった。

上層部は、厚労省に以前から依頼されていたのではないか?

渡部はそう考えた。

これから先の部分は、自分の仕事とは関係ないことで、完全に個人の興味になってしまう。

”MIYOSHI”はどこに連れて行かれて、厚労省は何をしようとしているのか・・・

気になってしょうがなかった。

救急車から隊員と、関係者らしき人物たちが降りてきた。

違法性が高いと分かりながらも、そっと救急車に近づき、マグネット型のGPS装置を車体の裏に隠して貼り付けた。

しゃがんでしまえば、意外と死角は多いもので、運転手に気づかれずにそれは行えた。

さて、この救急車はどこに行くのだろうか・・・




博士から話を聞きながら、だいたいのことは分かった。

そうだとしても、非人道的な実験が隠れて行われていた事に驚きは隠せない。

そもそも、そんなことを喋っても大丈夫なんだろうか?

「あの・・・今更なんですけど、なんで僕に話をしたんですか?」

「君は、三好くんの観察日記をつけると言ったね。つまりはこのラボのメンバーになったということじゃ。」

「いや・・・一言もそんなこと言ってませんが。」

「そうでないと困る。じゃぁ、今からゾンビになってもらおうかね。」

「じょ・・・冗談でしょ?」

「外部に機密を漏らすようであったならば、知り合いの研究チームのメンバーに頼むこともできる。」

「生きている人間に行うのは、流石に犯罪でしょ?」

じりじりと、気づかれないように後ずさりする。

「実は、そうでもないんじゃよ。」

「も・・・漏らしたりしませんよ。」

「まぁ、そんなことはせんけどな。君が外部に話したところで、誰も信じてくれんじゃろう。」

「まぁ・・・確かに。でも、合法ってどういうことですか?」

「正確には、合法に見せかけるじゃな。」

「はぁ・・・」

「この研究は秘密裏に行いたかった。成功の目処が立ってからじゃないと、国民に理解は得られないと考えていたからじゃ。幾ら不死身の研究とはいえな。」

「不死身の研究ですって公開しちゃった方が、理解を得られるような気がしますが。」

「では、君がゾンビになって、切り刻まれるかい? 一応は、麻酔などはして痛みは無い状態にしておる。本人たちからしたら直ぐに再生が始まるし痛みもない。しかし、外から見たら君が最初に感じたように、非人道的な行為だ。」

「内容まで聞かされると反対したくなります・・・」

「じゃろ? 各国はバイオの研究で競い合っていた。特に日本はこの研究で先を行っておる。隠されたプロジェクトはまだ幾つもあるのじゃ。少し話がそれたな。つまりじゃ。誰も体を提供してくれんし、死体を使うしかないと考えた。でも、数が揃わない。出来ることならば、損傷が少ない遺体が良いからじゃ。そこで、受刑者に減刑の処置として、体の提供を促したのじゃよ。これで合法じゃ。取引じゃからね。」

「そういう人もいたんですね。自分がどうなるか分からないのに。」

「君は素直な子じゃのう。都合が悪い人間を、その手続きでゾンビ化するに決まっておろう。」

「う・・・」

「しかし、これはリスクが大きい。本来は隠したい研究じゃ。だから、この手段をとったのは本当に数が少ない。そして、その研究が動いている間だけじゃった。今となっては、そんな研究は存在しないで押し通せばいい。」

「でも、現にゾンビはいるじゃないですか? その人たちは、不死身だし、いつかバレる時が来る・・・」

「その時は、新しい発見ということで、”初めて気づいた”ということにするじゃろうね。興味深いと言って、研究ごっこを始めるじゃろう。表上は。」

「もう意味が分かりませんね。」

「だから、僕が研究しているのさ。」

そこには、元気な三好くんがいた。




「気にしなくていいよ。恐らく博士は、ゾンビについて君に説明してたんだろう。僕のことについても。

「うぐっ・・・」

三好くんは笑いながら、目で博士を睨んでいた。

「友達に秘密を打ち明けるのは、自分でやりたかったのに。うーん。どうしようかなぁ。」

「何がじゃ?」

「博士の家ってリフォームする予定でしたよね?」

「そうじゃが?」

「僕にいい案があるんですよ。直ぐに手配しますね。」

「ちょ・・・ちょっとまちんさい。何をする気じゃ?!」

三好くんは、ささっとスマホを取り出して何やら業者に電話をかけている。

「あぁ〜。竹外工務店さんですか? 三好です。以前、リフォームの件でお話をさせていただいたんですけど・・・」

おいおい・・・既に話を進めてるじゃないか。

「今、許可が降りたので、前倒しで着工願えますか? ええ。そうですね。それで構いません。お願いします。」

博士は、ぼかーんと口を開けている。

「凄くいい案を思いついたんですよ。博士のお庭は土地の面積も広いし、何かひとつ育てることが出来るかもしれない。足りない分は、地元の人に交渉を既に済ませています。」

「何を言っているのか、さっぱり分からんのじゃが? と言うより、お金は?」

「そんなもの、このラボに割り当てられている研究費から捻出してるに決まってるじゃないですか。」

「それは、わしが”先進的な研究への投資”で国から勝ち取ったものじゃぞ? わしの研究の為の費用じゃ!!」

「それに対しては自分の身体を売ってでも捻出して下さい。」

「わしに何をせいというのじゃ! 三好くんに割り当てられておる研究費から捻出すればよかろーに!」

老人はぶるぶる震えている。いや、最初から震えているのか?

どちらにせよ、この震えは一生とれそうにない。

「三好くんも研究しているのかい?」

「そうだよ? その話をしようとしたら、博士がじゃまをするから。」

「わしの家が大変になりそうなのじゃ! 竹外工務店に電話せねば・・・」

老人は今度はおろおろし始めた。後に、博士の実印で書類は作られており、工事を止めることは出来ないことを知って、この老人は失神することになる。

「さて。僕は本当は機械工学を勉強したい。しかし、それと並行して、不死身を解除する方法を探しているのさ。」

「え? それって・・・死ぬ方法を探しているの?」

「そうだよ。世の中にはゾンビが存在する。しかし、政府は自然にその数を減らしたいと思っている。だから僕にそれを託した。」

「えらく乱暴な話だね。だって、自分の死に方を研究するのだろう?」

「今は不死身がいいのか、死が設定されている方が良いのか結論は出ていない。しかし、その選択肢は持っておきたいと思ったんだ。」

「その『不死身』研究チームにさせればいいだろ。」

なんでか分からないが、僕は三好くんに同情し始めていたし、怒りまで湧いてきていた。

「彼らは別の『不死身』のアプローチを研究し始めた。つまり『ゾンビルート』は死んだんだ。ゾンビは死んでないけどね。」

彼はニヤニヤしながら言った。どこまでが冗談なのか分からなかった。

「僕はね。意外と頭が良いらしいんだ。成人した後に、シナプスの再構築が進むと、効率よく強化されるらしくって、『不死身』研究の内容を理解してしまった。この事実は博士と僕しか知らない。これを『不死身』チームに伝えたら、また『ゾンビルート』の開拓を始めるからね。僕は天才ということにしておいたんだ。」

「はぁ・・・そうなのか・・・」

「そして、僕は『死』について研究することにした。これは政府と僕との利害が一致したからね。話はトントン拍子に進んだよ。仮に研究が上手く行かなくても、今度は新人類を見つけたというルートにシフトする。矛盾しているようで、政府の本音としては『死』を見つけて欲しいわけだ。」

「それでいいのか?」

「それもまた矛盾なのだよ。でもね。自分に選択肢が増えるのは、決して悪いことじゃないだろう?」

僕と三好くんは真面目に互いを見つめていた。

睨んでいたに近いかな?

うろうろしている博士を除いて。




キャラ原案:taguchizu(id:taguchizu)
ストーリー:Milk (id:maxminkun)