博士と三好くん。そして僕。

(小説)博士と三好くん。そして僕が織りなす日常。

不死身殺し

渡部はできるだけ目立たない格好で山に入ることにした。

登山者の格好だ。

一人でGPSが指す位置の場所を目指す。

やはり少し緊張する。

山に入る前に、道のような場所は見つけた。砂利道だ。

ここを救急車は登っていった?

しかしながら、木の間に「私有地につき。進入禁止」と書かれたテープが何重も渡されていたが、山なのだから道をわざわざ行かなくても良い。

山全体を壁で覆ったら、それこそ怪しいしな。

とにかく獣道を進んでいくことにした。

何時間歩いたか分からない。獣道から砂利道の方向に出て、救急車の通り道を歩いてみたが監視カメラのようなものはなさそうだった。

「意外と無防備だな・・・」

やっとの思いで、目指している場所に着いた。

建物は大きい。だが、外装は緑や茶色の迷彩色のようになっていて、しっかり目指して確認しないと一見しては分からないようになっていた。

何やら出入り口のような場所がある。

ちょうど人が出入りしているようだった。

「あの・・・ちょっと道に迷ってしまいまして何時間もさまよってたんです。後、帰り道も分からないんです。よかったら少しだけ休ませてもらえませんか?」

「あのね。ここは私有地なんですよ? 困るなぁ。」

「お願いします。携帯電話も圏外ですし、どうにもならないんですよ。何か連絡をとれるようにはなりませんか?」

「そ・・・それは。うーん。まぁ、じゃあ少しだけ休んでいって下さい。そして電話線は引いてますから、ここの人間が代わりに電話をしましょう。」

「代わりですか?」

「ええ。そうです。」

やはり私からどこかに連絡されるのは不味いのか。

「分かりました。ありがとうございます。」




「なー。渡部さんを最近見ないよな。」

「何も連絡なしに欠勤とかしないタイプだぜ?」

「もう1週間も連絡ない。」

「絶対におかしいよ。”MIYOSHI”の件に関わってから何かコソコソやってたもん。」

「あんまりそれには触れるなよ。上の人たちがピリピリしてんだ。」

「ほら。上司が来たじゃんかよ。お前が噂するからだよ。」

「全員聞け!渡部は長期入院することになった。突然の脳梗塞だったらしい。一命はとりとめたのは不幸中の幸いだった。だが、リハビリがあるので復帰には時間がかかる。以上だ。いいな?デリケートな問題だから、親族に連絡するのもなしだ!もちろん本人に面会も無理だからな!」




三好くんの農園。もとい博士の農園は豊作だった。

「ヤッパリ。アイジョウタイセツ。コンセツテイネイ。アンゼンダイイチ!」

「おい。ロナウドがまた変な日本語覚えてるじゃないか。」

「安全第一は大切だよ?」

「使い方が間違ってるって言ってるんだよ!」

「まぁまぁ。これでコーヒーは飲み放題なんだ。それでいいじゃないか!」

「この間なんか、博士は失神どころか泡吹いてたじゃないか。自分の家を見て。」

「僕にガウディーみたいな、半永久的な建築物を作れと言うのかい? それは酷な話だなぁ。」

「イジメ。ダメ。ゼッタイ!」

「君たちがやってることが既にイジメだよ! それに、半永久的に家が完成しないなんて聞いたら、博士は失神を通り越して死ぬよ?」

「それは所謂『憤死』ってやつかな? そのパターンを見れるのはいいかもしれない。」

「フンシ? ノーノー。クソハ、モウシンデル。」

「ロナウドは黙ってろよ!」

コーヒーの木の実は赤く色づいていた。

どの時点で収穫するのが適切なのだろう。

「なぁ。植えて1年経たないだろう? 育つの速くないか?」

「それは遺伝子組み換えを行ってるからだよ。」

「え?」

「意図的に成長を早めている。そして当然ながら寿命は短い。確かに植物と人間では、大きく違うけれど、その成長と衰退の速さを意図的に操作できるかを試してみたんだ。何か『不死身殺し』のきっかけになるかもしれない。」

「なんか知らない間に真面目なことやってるんだな。あと・・・研究名は『不死身殺し』って名前つけたの?」

「コードネームだよ。研究の正式名称は、『細胞再生成の仕組みにおける突然変異体及び不滅性を獲得した・・・』」

「あー。もういい。もういい。『不死身殺し』でいいや。」

「キョウヘイノ、フジミゴロシ!」

「なんかまた変なの覚えた・・・あと、俺を犯罪者みたいに言うな!」

「とにかくだ。この研究には細胞の遺伝子の仕組みを解析することは必須だ。その為にも初歩的な実験として調整を行ってみた。一瞬にして最大のポテンシャルを発揮し死滅する。さて、これが動物に応用できたら、『人間』はどうするのかな?」

彼は、ニタニタと笑っていた。

「キョウヘイノ、フジミゴロシ!」

おい。誰かこいつに正しい日本語を教えろ。




キャラ原案:taguchizu(id:taguchizu)
ストーリー:Milk (id:maxminkun)